●●富士登山と健康●●

登山が健康にいいことは、多くの方々が述べています。特に富士登山は、標高が高い場所での継続的な運動ということで、運動強度が高く、平地でジョギングをしているのと同じという説もあります。「つまり、それはダイエットにいい?」と女性の方は気になるところかもしれません。確かに個人的な経験ですが、一回登ると1.5kg〜2kg体重が減っていることがあります(すぐ戻りますけどね)。登山はもっとも効率的な有酸素運動であり、美しい自然の中に入ることは精神的にも高い効果があると言われています。

鹿屋体育大学の山本教授の研究によると、「体重60kgの人が5kgのザックを背負い、計9時間10分で富士山に登れば、行動中のエネルギー消費は約2390キロカロリーになる」とのこと。平地で普通に歩いて50kg!これだけ歩くには相当の覚悟と時間が必要ですが、富士登山ではココロがチャレンジしている間に、体も相当がんばっている訳ですね。

消費カロリーが高いということは、効率的なダイエットと言えますが、逆に言えばそれだけのエネルギーを急速に費やしているわけで、その分意識的なフォローが必要だということにもなります。それが無いと、不必要なリスクを背負うことになりますので。

●●安全を管理する●●

野外活動には危険は付きモノで、富士登山も例外ではありません。富士登山の体験談を聞くと、「サイコーだった」という人と「サイテーだった」という人がいますが、天候や怪我・病気が大きく関係していることは言うまでもありません。晴れた富士山にはスーツに革靴で登っている人がいますが、雨や風が激しいときにこれでは痛い目にあってしまいます。安全は”結果”ではなく、自分自身で管理するという意識が大切だと思います。

高山病

富士山でよく聞かれるのが高山病。予防・対応はざっくりと次のように分けることができます。
登山前 ⇒前日よく寝る、消化のよいものを食べる、登り始める前に高所順応する
登山中 ⇒ゆっくり登る、水分補給をこまめにする、休憩をきちんととる
高山病になったら ⇒ 深呼吸、無理せず休憩、高度を下げる(下山する)

高山病になると、吐き気・嘔吐、息切れ、めまい、倦怠感、食欲減退、尿量減少、睡眠障害といった症状がでます。筑波大学浅野名誉教授によれば、2500m以上に急激に登ると、25%の人に上記のうち3つ以上が発症し、3500m以上ではほとんどの人が上記のいずれかを経験し、その10%は重症化するとされています。
ほとんどの人は車で2300mまでアクセスすることを考えると、誰もが可能性をもっているわけで、これは普段運動しているとかは関係ありません。

登り始めて最初の休憩の時、ご自分の心拍数を計ってみてください。手首に反対側の指を当てて1分間。最高心拍数(220−年齢)の75%を超えないようであれば、「ゆっくり」ペースの合格ラインということです。個人的には120を超えないようにしています。目安としては「息切れしない」ことですね。半歩ずつ、だらだらと登ることを心がけています。

それから、寝ている間は呼吸が浅くなるため、酸素が十分体に供給されず、高山病になりやすいとのことです。つまり、寝る前は好調だった人が、朝起きたら高山病、ということもあり得るわけです。

脱水をもたらす飲酒や肺動脈圧を高める喫煙も登山中は控えたほうがいいでしょう。また、携帯酸素はあくまで応急措置であり、根本的な解決にはなりません。

登山中の怪我

登山中に多い怪我は、なんといっても足首捻挫やヒザの炎症、転倒による打撲です。これらのほとんどは下山中に発生していると言われています。つまり、登りは必然的にゆっくりペースで歩き、緊張感から慎重になっているため安全意識が高い一方、下山時は比較的ペースが速く、緊張から解放されて無防備になっていることが多いのです。加えて、一歩ずつに体重がかかるため足への負担は非常に大きくなります。万が一コケ場合も、下りの場合は地面が遠いのでダメージも大きいです。

山登りの場合、基本的に登った分だけ自力で下りるしかないので、疲労困憊した状態で山頂に辿り着いたというのはあまり美しい話ではありません。下山の分の気力・体力を残すことが大事です。個人やグループ(つまりガイドツアーでない場合)は、絆創膏やテーピングテープといった基本的な救急品は持参した方がいいです。最近はアレルギーの問題で内服薬を他人にあげることはしないので、頭痛などに備えて鎮痛剤なども各自もっていくことをお勧めします。
これらはあくまでも応急措置ですので、もし、大事に至るような場合は吉田口・富士宮口登山道の救護所や診療所を利用することも可能です。

少し時間がかかりますが、今後、救護所・診療所の往診時間、これまでの事故事例等をアップする予定です。

※鹿屋体育大学山本正嘉教授、筑波大学浅野名誉教授の研究成果を参考としました。

要注意!事故の傾向>>>